--
--.--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2008
12.03

日本の歌 100 ─リンゴの唄─

リンゴの唄
  作詞:サトウハチロー 作曲:万城目正 昭和20、映画「そよかぜ」主題歌の主題曲

1 赤いリンゴに 口びるよせて だまってみている 青い空
  リンゴはなんにも いわないけれど リンゴの気持ちは よくわかる 
  リンゴ可愛いや 可愛いやリンゴ

2 あの娘よい子だ 気立てのよい子 リンゴに良く似た 可愛いい娘 
  どなたがいったか うれしいうわさ かるいクシャミも とんで出る 
  リンゴ可愛いや 可愛いやリンゴ

3 朝のあいさつ 夕べの別れ いとしいリンゴに ささやけば 
  言葉に出さずに 小くびをまげて あすも叉ね 夢見がお 
  リンゴ可愛いや 可愛いやリンゴ

4 歌いましょうか リンゴの歌を 二人で歌えば なおたのし 
  皆で歌えば なおなおうれし リンゴの気持ちを 伝えよか 
  リンゴ可愛いや 可愛いやリンゴ

 
 映画「そよかぜ」は戦後初めて作られた映画で、「リンゴの唄」は主演の並木路子が唄ってヒットした。
 詩は戦時中に作られており、軍部から否定された〈軟弱さ〉が、戦争で疲弊した日本人の心に染みいった。
 童謡からスタートし、戦時中も妻子を疎開させつつ、最も危険な首都東京で執筆に励んだ詩人の魂は、決して軟弱なものではなく、筋金入りだった。
 死と血と混乱と不安が渦巻く世相にあって、一個のリンゴへ「気持はよくわかる」とつぶやける心の強靱さを想う。
 彼は、リンゴと通じた時、きっと愛おしくてならなかったことだろう。
 その気持ちは、何の細工もなく「リンゴ可愛いや 可愛いやリンゴ」と表現するしかない。
 松尾芭蕉の「松島やああ松島や松島や」と同じである。

 世相に構わず屹立していると思われた詩が、戦後の世情へ比類のない潤いを与えた。
 戦後すぐに生まれた私は、物心がついた頃から、ずっとこの歌に囲まれていた。
 どこでも流れ、誰もが口ずさんでいた。
 赤く、丸く、ほどよく甘く、ほどよく酸っぱく、ほどよい歯ごたえのあるリンゴ、しかし当時は高嶺の花だったリンゴになぜあれほどの親近感を抱いたのだろう。
 少女や幼子の頬を連想させることはもちろんだが、雪深い北国からの贈り物だったことも関係があるのだろうか。
 歯をくいしばる人々へ、小さくとも確かな希望があることを教えたのだろうか。

 いずれにしても、この歌は、明らかに、心へ刻み込まれるものを持っていた。
 何もかもが転変する中で、半世紀以上にわたって人々の胸の奥へ座り、情感を動かし続けるものは、真の宝ものと言えるのではなかろうか。
 50音順とはいえ、「日本の歌百選」のトリを飾るにふさわしい名曲である。
スポンサーサイト
back-to-top
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。