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2011
02.11

NHK文化講座「生活と仏法」講義録 65 ―日本と中国の仏教交流─

 2月9日、NHK文化講座「生活仏法」において受講者の皆さんと対話を行いました。
 教材はDVD『チベットの風』です。
 発祥の地インドにおいてイスラム教勢力が仏教を滅ぼす間際まで、最も精緻に構築された最後の仏教である密教はチベットへ伝えられ続け、チベットの人々は、仏教を学ぶために整えたチベット語でそれを学び伝えてきました。
 密教には中国から日本へ渡った流れと、チベットで成熟した流れと、二つの系統があります。
 日本では真言宗と、天台宗の一部が千年の時を超えて守り発展させています。
 しかし、チベットではその存在が許されず、半世紀にわたって寺院が破壊され僧侶が殺されてきただけでなく、仏教を根幹としたチベット人の生活そのものが抹殺されようとしています。
 映像は雄弁です。
 このDVDは、私たちへほとんど知らされていない恐ろしい現実を突きつけます。
 ぜひ、たくさんの人に観ていただきたいと願っています。

 さて、文化大革命によって破壊された仏教はチベットを除き、改革・解放政策の中で復活した面もあります。
 2月5日付の河北新報は、「時空超え僧の魂交流 真言宗のルーツ」と題した特集を掲載しました。

 お大師様へ密教のすべてを伝授した直後、「日本で広めよ。私は生まれ変わってお前の弟子になろう」と言った青竜寺恵果和尚は遷化し、日本で即身成仏(ソクシンジョウブツ)法が確立した一方、中国における密教は845年の仏教弾圧によって破壊され尽くしました。
 しかし、昭和59年、廃れていた青竜寺の跡地に「恵果・空海記念堂」が建てられ、平成9年に記念堂は青竜寺となり、住職の寛旭(カンギョク40才)師が再建を進めてきました。
 今回、来日した寛旭師は信徒5人と共に、高野山へ参詣し、お大師様が日本へ伝えた『理趣経』を読誦しました。

「空海、恵果が日中仏教徒の友好交流をお守りくださるよう、青竜寺が一日も早く完全復興できるよう心から祈りました」。
「来る度に空海の偉大さを感じる。
 彼は短期間で唐代の密教を学びとった。
 書や道教、土木技術にも通じた天才だ」。


 記事は、「経済成長に伴って、寺への寄進や参拝者も増えた。仏教研究も盛んになり、今は『仏教ブーム』とさえ言われる」と書いています。
 寛旭師。

「急激な経済成長により、物質生活は豊かになったが、精神生活が追いつかない。
 人生はむなしいと感じて宗教に救いを求める人が増えた」。 
「自分自身と人生の大切さを知ることだ。
 仏に帰依すれば、心は愉快になり、煩悩は減り、仕事への活力もわく。
 信仰で人々の生活を良くし、精神面を豊かにしたい」。
「唐代に密教寺院だった青竜寺と大興善寺を拠点に密教を復活させたい」。
「3年後には九重塔建設などすべての復興計画を完成させたい。密教道場もつくり、僧侶を日本へ留学させて密教を還流させたい」。


 昨年の中国漁船による衝突事故に際し起こった反日デモなどについては……。

「問題を解決するのは政治家の仕事だが、日中の国民が交流を深め、互いに理解をし合えば、矛盾は大きくならないでしょう」。

 ダライ・ラマ法王は、DVD『チベットの風』で指摘されました。

「チベットを守るための中国へのアプローチには二つの道がある。
 一つは政府との交渉、一つは中国の民衆との相互理解である」。

 まことに、賢者は道筋を見極めておられます。

 あまねく分けへだてなく人々を救う仏法が、人々を対立させ傷つけるものを克服させてくださるよう祈り続けます。

〈河北新報掲載の写真〉
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「のうまく さんまんだ ばざらだん かん」※今日の守本尊不動明王様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。



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2011
02.09

チベットの風(2)

 DVD『チベットの風』の続きである。 

 最盛期には世界一と称されたデプン寺には現在700人の僧侶がいる。
 中国が来て、文化大革命に襲われる前は7000人が修行していた。
 殺され、亡命し、還俗させられ、僧侶は激減した。

 ガンデン寺もまた最盛期には9000人が修行する世界最大規模の寺院だったが、文化大革命で、僧侶は一人残らず殺された。
 ガンデン寺で、ある宗派が成立していたのが理由である。
 ダライ・ラマ法王とパンチェン・ラマがゲルク派のため、ゲルク派の創始者ツォンカパが建立した寺院は完全に破壊され尽くした。
 西チベットの高僧と支持者によって4寺が再建されているものの、今も破壊の跡が生々しく残っている。
 青年は言う。
「5年前まではダライ・ラマ法王の写真を家に置けましたが、今ではそれさえも許されません」。

 パンチェン・ラマの本山タシルンポ僧院はダライ・ラマ一世の創建によるが、今は4ヵ寺しかない。
 ラサから来た男性の話。
「一番目の寺院には、パンチェン・ラマ10世が造った世界一大きな銅製の仏像が安置されています。
 二番目の寺院には、1989年に亡くなったパンチェン・ラマ10世の墓があります。
 仏塔中にある遺体に、当局が防腐処理をしました。
 三番目の寺院には、パンチェン・ラマ4世の墓があります。
 中国が来るまでは、たくさんの寺院がありました。
 それらはすべて破壊され、パンチェン・ラマ5世から9世の墓は、最後の墓へ一緒に納められました。
 6000人いた僧侶は800人になってしまったのです」。

 チベットには転生ラマ(トゥルク)として崇められる高僧がたくさんいる。
 13世紀に転生ラマ制度が始まってからは、歴代ダライ・ラマ法王と歴代パンチェン・ラマが転生ラマの代表とされた。
 歴代ダライ・ラマ法王は、5世から政治と宗教の実験を握る国家元首となった。
 歴代パンチェン・ラマは、タシルンポ僧院の座主を務め、阿弥陀仏の化身として尊ばれている。
 パンチェン・ラマが亡くなると、ダライ・ラマ法王が次のパンチェン・ラマの転生者を承認・選定する。

 1989年、パンチェン・ラマ10世は、こうした声明を発表した4日後、謎の死を遂げた。
「中国のチベット支配は、チベット人へ対し、利益よりも多くの害をもたらした」。
 パンチェン・ラマ10世亡き後、11世を建てる必要が生じた。
 亡命中のダライ・ラマ法14世は、チベットにいるゲントゥン・チューキ・ニマ少年を、ダライ・ラマ法王認定のパンチェン・ラマ11世とした。
 しかし、すぐに、この少年は家族と共に行方不明となった。
 中国政府は後に、ニマ少年の拉致を認めている。
「本当のパンチェン・ラマ11世はチベット人ですが、家族共々、どこにいるかわかりません。
 中国の刑務所に拘束しているのでしょう」。
 政府はギエンツェン・ノルブ少年を11世として立た。
「パンチェン・ラマ11世は二人います。
 一人はダライ・ラマ法王に認定され、もう一人は中国政府が立てました。
 北京にいるのは中国擁立のパンチェン・ラマです。
 北京のパンチェン・ラマがツガツェやラサの訪問に際して、政府は法律を作りました。
 民衆は外に出、スカーフ(カター)を持って歓迎しなくてはいけません。
 皆は彼がパンチェン・ラマだと信じていると言いますが、内心ではまったく信じてはいません。
 中国政府が立てたからです」。
 少年だったパンチェン・ラマは現在20才になり、活動させられている。
 もちろん、中国政府が立てたパンチェン・ラマはダライ・ラマ法王に認定されてはいない。
 だからこのパンチェン・ラマを信じているチベット人は誰もいないのである。
 中国人すら信じるだろうか?


 これは何世紀も前の遥か昔にあったできごとではなく、わずか半世紀前に始まり、たった今、この地球上で継続している現実である。
 人権侵害という耳慣れた言葉でくくってしまえないほど現実離れし、想像を絶する弾圧である。
 人間を人間扱いしない政治体制の中国が軍事・経済・政治各方面で世界へ大きな影響力を及ぼしつつあるという事実、数百万人の人々が暮らす一国が丸ごと簒奪され、民族が一人もいなくなるようにし向けられているという事実の途方もなく巨大な暗黒。
 私たちは、国会で誰一人この問題を採りあげようともしない国に安閑と暮らすことを恥じないでいられようか。

〈真実〉
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2011
02.09

チベットの風

 DVD『チベットの風』を観た。
 冒頭に「ただ真実を知りたい一心で、私はカメラを片手にチベットに向かった」とある。
 撮影したのは「日本に住む一般の日本人」である。
 以後、Aさんとしておく。
 本人の姿はカメラに写っているが、撮影に協力した現地の人々は、身の危険が予想されるため、本名はもちろん、顔も一切明らかにされていない。
 14年前の映画『チベット チベット』では多くの人々が写っていた。
 中国政府による恐怖政治は弾圧の度を強めている。

 Aさんは、33年間の拷問に耐えたチベット僧パルデン・ギャッツォ氏の講演を聞き、平成18年、チベット行きを決意した。
 パルデン・ギャッツォ氏の生涯は「雪の下の炎」という書籍とDVDになっている。 

 観音菩薩の住まう宮殿とされるポタラ宮は、ダライ・ラマ法王亡命後、一大観光地になっている。
 平成18年3月のチベット人による抗議行動以来、周囲は警察と軍に警戒されている。
 町には硬い空気が感じられる。

 富士山と同等の標高にあるので高山病に罹り、3日間、飲まず食わずの状態で、チベット人の案内を探した。
 なかなか見つからなかったが、ようやく亡命経験があり英語の話せるチベット人と出会った。
 周辺には立派な道路ができ、道路際は真新しい整然とした町並みになっているが、3年前に政府が新築を義務づけたことによる。
 日本円にして一軒あたり700~800万円かかる。
 政府が半額を払い残りをチベット人が払うが、中国人の半分ほどしか給料をもらえないチベット人には支払い困難である。
 チベット人住民は次々と整備される道路を歓迎していない。
 ネパールやインドへ物資を運ぶのが目的であり、それで儲ける中国人の役にしか立っていないからである。

 一人っ子政策は厳しく、子供は二人までしか認められず、それ以上になると税金がかかる。
 しかし、チベットに住む中国人は例外であり、子供は5人でも6人でも構わない。
 チベット人の住民を減らし、中国人の住民を増やすためである。
 チベットに住むチベット人は600万人、中国人は750万人と言われている。
 住民はこっそり言う。
「私たちは、幸せではありません」。

 チベット人の半分は教育を受けられず、教育を受けていないと仕事に就けない。
 ラサでは一部のチベット人に教育の機会が与えられるが、東部や西部の放牧民や農民は学校へ行けず、職がないので食うや食わずである。
 3年前に鉄道が開通し、大量の中国人が来た。
 レストランなどの店のほとんどは中国人が経営している。
 仕事にありつくのは70パーセントが中国人であり、サインすらできないチベット人は排除されている。

 チベット人の放牧民や農民は強制的に、政府の指定によって移住や定住を余儀なくさせられている。
 放牧などが生態系を破壊しているという名目だが、自然の破壊は気候変動が主な原因であり、チベット人は半農半牧で自給自足の生活をずっと続けてきた。
 強制移住させられた人々は生きるために中国人から仕事をもらうしかなく、100万人以上のチベット人は失業・貧困・アル中などで苦しむ。
 中国政府は、堂々と発表している。
「農民と放牧民の強制改革は、経済成長の促進だけでなく、ダライ・ラマの影響力に対抗するためである」。

 もうすぐ空港もオープンする。

「3月14日にチベット人のデモが起こりましたが、チベットで放送されたのは大勢の中国人が殺される場面だけです。
 当時、3日か4日の間に3000人ものチベット人が殺されたのに、政府は決して発表しません」。

 チベットの三大寺院であるデプン寺・ガンデン寺・セラ寺を訪ねた。
 セラ寺には明治から大正にかけて、多田等観、河口慧海などが日本人として始めて訪れ、学んだ。
「中国人が文化大革命で来る前は、5000人ほどの僧侶が住んでいました。
 その後、死んだり、殺されたり、亡命したりして、今では250人になりました」。
 修行僧は20分の1になったのである。
「政府はこれ以上、僧侶を認めないので、チベット人は皆、心配しています。
 寺院の破壊や僧侶の殺戮は、文化大革命が行ったのです」。
 しかし、実際は1958年頃から侵略が行われ、僧侶は強制的に還俗させられ、寺院は破壊され、寺院はその機能を失わされていたのである。
 昔のことを知らないチベット人は、政府による「一連の破壊や僧侶殺戮は文化大革命のせいであり、中国政府に責任はない」という歴史教育によって洗脳されている。

「不幸や問題などがあれば、僧侶へ2千,3千、6千元などのお布施をします。
 僧侶は法要や祈りを行います。
 参拝者は賽銭箱にわずかな寄附を行います。
 一年経つとこれらのお金が集められ、仏像再建やお寺の装飾などに使います。
 政府からの補助はありません。
 観光客の拝観料は、お寺に30パーセントだけが与えられ、ビジネスを行わない僧侶たちにとってそれが全収入です」。

 寺院は、明らかに、観光資源に過ぎなくなっている。



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「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
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