最終回です。
5 危機からの転換
原子力発電は、「生態圏の外部に属する核反応の現象を、無媒介的に生態圏の内部に持ち込んだシステム」であり、「媒介なしのエネルギー装置」であることが本質です。
「原爆は科学者によって『制御不能となって暴走する原子炉』と定義づけられている。
そう考えれば、原爆においても原発においても、この媒介なしのエネルギー装置という本質はまったく変わらないということがわかる」
原発事故は、原爆が投下された状態と原理的にはまったく同じです。
私たちはこの真実をしっかりと認識せねばなりません。
「原子核技術が誕生してからほぼ七十年、過激な構造をもったこの技術体系の本質に、多くの日本人はいま疑問を抱きはじめている。
核技術に類似の過激な構造をもった政治思想から生まれたソ連が、誕生から七十年をへて解体していったように、原子力発電は推進してきた第七次エネルギー革命は、意外なほど短命に終わる運命にあるのかもしれないという予感を多くの人が感じている」
ではどうすればよいのか?
「原子核に手を差し込んで、そこに核融合や核分裂を起こさせるのではなく、ふたたび原子核の外側を回る電子を操作する技術に立ち戻るのである」
「これまで植物がおこなってくれていた太陽エネルギーの変換を、電子技術によっておこなうことで、第八次エネルギー革命は、これまで人類が積み重ねてきたエネルギー革命の成果のすべてを、自分のなかに組み込みながら、それらすべてを否定的に乗り越えていく」
原子力発電が行われるまでは、太陽の恵みを受けた植物が光合成という媒介作用を行い、すべての生きとし生けるものがその媒介をとおしてエネルギーを分け与えられて生きているのと同じく、人間もまた、樹木や石炭や石油などという媒介を通ったものたちからエネルギーを分け与えられ、文明を構築してきました。
しかし、原子力発電は、太陽の力をいきなり地上でつくる媒介なしの動きです。
生態圏では起こりえない原子核の操作という異次元の行動でつくった原発により、一時的に膨大なエネルギーを獲得した一方で、数度の事故は、原爆投下と同じく、とてつもなく広範な地域を無人の荒野と化しました。
もう、これだけ体験をすればたくさんではないか、もう、そろそろ〈思い知り〉、生態圏の範囲で太陽エネルギーを獲得する方法へ立ち戻ろうではないかと言うのです。
6 仏教的思想の復興
「第八次エネルギー革命は、一神教から仏教への転回として理解することができる。
仏教は一神教の思考を否定する。
一神教は、人類の生態圏にとっての外部を自立させて、そこに超越的な神を考え、その神が無媒介的に生態圏に介入することによって、歴史が展開していくとく考えを発達させた。
このような超越論的な歴史主義の思考から、モダニズムの技術化思考は生まれた。
仏教はこのような思考法を、ラジカルに否定するのである。
仏教は、生態圏の外部の超越者という考えを否定する。
そして、思考におけるいっさいの極端と過激を排した中庸に、人類の生は営まれなければならないと考えた」
これまでのエネルギー革命は、それに対応する宗教や芸術の勃興を伴っており、第七次と言われる原子力発電には一神教がつながっていると考えられます。
私たちのいのちがはたらく生態圏の外部から、核エネルギーも唯一神も招いたからです。
安全で人類の身の丈にあったエネルギー革命をめざすならば、それは生態圏の内部で無理なく行われねばならず、そうした姿勢には、超越神を認めず、私たちの心の中にこそ超越的なものを求める仏教が似合っているというのです。
神道もまた、生態圏のなかにある森羅万象に超越的なものを感得する道です。
「神道の神々は、生態圏を構成するさまざまな強度現象を、精神化して表現したものである。
だから神々を敬うことは、自然に畏敬の念をいだくことと同じなのである」
そして、日本は歴史的に神道と仏教は渾然一体となって私たちの精神風土を形づくってきました。
「仏教は神道をとおして、自然の具体性と結合することで、ただの抽象的な学問ではなくなった。
このように、仏教はどこの世界でも自然宗教との折り合いがよいのである」
7 おかげさまの復権
「地球生態圏を生きるすべての生命のほとんどの活動は、太陽エネルギーによって支えられている。
太陽と私たち生命との間に、交換関係はなりたっていない。
太陽からの一方的贈与によって、私たちは支えられている」
ここで氏のいう「贈与」こそ、私たちが口にする「おかげさま」の当体です。
古人の言う「お天道(テントウ)様のおかげ」なしに、地球上に生命は誕生せず、現在の繁栄もありません。
しかし、私たちはこの根本的な事実を忘れがちです。
石炭も石油も、かつて植物が光合成によって蓄えた太陽からのお恵みを採掘者である人間へ分け与えてくれるものなのに、資本主義的思考ではその真実が忘れられ、利益を生む資源や商品にしか見られません。
そのようにして資本主義は自己完結型システムの中に生態圏をそっくり取り込み、損得や計算の輪の中ですべてが処理されるようになりました。
「経済のもっとも深い基礎には、贈与が据えられているのである。
太陽エネルギーと同じように、贈与性がすべての経済活動を根底で支えている。
この贈与性を忘却することによって、交換の経済がすべてを押しのけて、経済活動の前面にあらわれてきた。
この状況は、太陽のおこなう不断の贈与を忘却して、化石燃料やウラン燃料を自分の資産として燃やし続けてきた資本主義の場合とそっくりである。
化石燃料にせよ、原子力にせよ、資本主義に生命をあたえ続けてきたそうした燃料からは、贈与性の痕跡が消し去られている。
贈与性の忘却の上に、商品経済は稼働しているのだ」
しかし、実態がそのままに理解されれば、「おかげさま」へ心が開き、科学もそれを有効活用するようになることでしょう。
本来活用されるべき生態圏の生成の原理が最新の科学技術によって形になれば、安全な豊かさがもたらされます。
「どんな文明も、自分をつくりなしているおおもとの原理に帰るのでなければ、未来への可能性をみずから開いていくことはできない。
第八次エネルギー革命の原理は、驚くほど日本文明の生成原理と似ている」
「原発の開発とともに進んできた第七次エネルギー革命の時代は、ゆっくりと衰退のへの道に入っていく。
それに替わって、生態圏の原理にたち戻って、そこに別の豊かさを取り戻そうとする、第八次エネルギー革命の時代が隆起する。
それに連動して、経済の思想が根底からの転換をはじめる。
社会は再生への運動をはじめる。
とてつもない災禍をくぐり抜けたあと、日本の進むべき道は、いまやはっきりと前方に見えてきているのではないか」
互いの関連性(縁)によって成り立っている生態圏は「おたがいさま」の世界です。
その世界は、太陽による「おかげさま」によって支えられています。
今こそ、この単純で子供にも理解しやすい〈二つの原理〉、〈二つの心〉を柱とし、太陽の恵みと植物の光合成への感謝から新しい文明を創り始めようではありませんか。
原発事故の早期終息のため、復興へのご加護のため、般若心経の祈りを続けましょう。
般若心経の音声はこちらからどうぞ。(祈願の太鼓が入っています)
お聴きいただくには 音楽再生ソフトが必要です。お持ちでない方は無料でWindows Media Player がダウンロードできます。こちらからどうぞ。
「おん さんまや さとばん」※今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
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