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2014
08.21

認められ救われる世界『思い出のマーニー』

201408210001.jpg
〈『思い出のマーニー』オフィシャルサイトよりお借りして加工しました〉

 映画『思い出のマーニー』には感心させられました。
 複雑な家庭環境の影響で心を閉ざしがちな杏奈は、持病の喘息を治そうと、おじさん夫婦の住む海辺の町へ行きます。
 海の幸、山の幸に恵まれた場所で、夫婦は木彫りや畑仕事で気ままに暮らし、杏奈の行動も縛らないので、杏奈は好きな絵を描き、散歩をして過ごします。
 ある日、入り江の奧にある古い洋館で、金髪の少女マーニーに出会います。
 デジャ・ヴを伴った不思議な出会いは、二人を強い信頼感で結びつけます。
 自分で自分を嫌っていた杏奈は、「あなたのことが大好き」と認めてくれるマーニーに初めて心を開きます。

 この世ならぬ気配の洋館に現れたマーニーもこの世ならぬ存在でした。
 思いがけないできごとの連続で、二人に別れの時が来ます。
 自分を救ってくれたマーニーから、急な別れを許して欲しいと言われ、杏奈は心から許すことによって、今度はマーニーを救います。
 マーニーへ心を開いた杏奈は、継母にも周囲の人々にも心を開いている快活な女の子へと変身し、思い出の港町を去るのです。

 ここにある4つの救いを考えてみましょう。

1 大自然

 おじさんの家の周囲に広がる光景は、そこにいるだけで心身を解放してくれます。
 疲れ、ささくれ立った神経に何一つ障りとならない大自然は、本来、自然の一部である人間を、大海原に落ちた一滴の雨粒のように同化します。

2 不干渉のおじさん夫婦

 人のよい夫婦は、杏奈が田舎の子とぶつかろうが、夜に帰宅しようが一切構わず、詮索もせず、ありのままに認め、信頼できる家族として扱ってくれます。
 信頼しているがゆえの放置は、放置されている側にとって、自分が信頼されている証(アカシ)と感じられます。
 普段の私たちは、相手を思いやるがゆえに、口出しし、手出しし、詮索しますが、思いやられる側の気持次第で、それらがうるさいお節介であり、自分への不信の証(アカシ)と感じられたりします。
 そうかと言って、悪意や無関心による放置はもちろん、あってはならないことであり、このあたりは家族間の人間関係にあっても難しいところです。

3 自分を好いてくれるマーニー

 性格の歪んだ自分に自己嫌悪を懐いている杏奈にとって、「大好き」と無条件に認めてくれるマーニーは、杏奈からも「大好き」と無条件に認める心を引き出し、相手へ向かう温かな心は、閉ざされた世界を開くかけがえのないドアになりました。
 誰にも話せない辛い体験や気持を打ち明けるという重要なできごとも、ドアの先に待っていました。
 たくさんの善男善女がさまざまな願いを持って当山を訪れます。
 若い女性に断然多いのが、「好きな人とつき合えますように」「すてきな人と出会えますように」といった異性との出会いです。
 そうした願いの中には、きっと、自分を認めて欲しいという隠された切実な願いが含まれているのでしょう。

4 祖母の思いやり

 幼い杏奈を見守ってくれていたおばあちゃんが、秘密の役割を果たしていました。
 そもそも祖父母との関係は、同じ家族といっても、親子関係とはまったく異なっています。
 第一に、親にとって子供とは、自分の人生の大きな部分をかけていながら、必ず自分の世界を見つけ〈巣立って行く〉相手ですが、祖父母にとってとは、〈後を託す〉相手です。
 この場合の「託す」とは、具体的に自分の面倒を見てもらったり、何かをさせたりといった意味ではなく、自分が亡くなった後もこの世を存続させ、自分が持っている希望のなにがしかも、その心のどこかに残せるのではないかという漠然とした期待感を意味します。
第二に、おそらく多くの親は、自分の子供について、育て方が間違っていた、とか、もっとああしてやればよかった、とか、なぜこういう子に育ったのだろう、などといった〈失敗〉のイメージを多かれ少なかれ持っているはずです。
 子育ては万全だったなどという例はあまりないでしょうし、もしも親が本当にそう思っていると聞けば、「よかったですね」と言いつつも、薄ら寒いものを感じてしまいそうです。
 そうしたわけで、祖父母は、を〈無条件〉に受け容れる気持を持っています。
 だから、親は、「あまり、甘やかさないでください!」と怒らず、我が子がお祖父さんやお祖母さんから無条件に信じられ、認められ、教えられ、与えられ、守られる体験を許してください。
 祖父母がに与えるのはモノ金でなく、まさしく、自己中心という穢れの伴わない〈完全な優しさ〉を一身に受ける体験です。
 優しさ体験は、幼い心に眠っている優しさの種へ清浄な水や、きらめく光や、嬉しい暖かさや、成長する養分を与え、芽が出る力となるのです。
 もちろん、実際に子供を育て、守り、一人前の大人にする責任も喜びも親にあり、親は日々、現場に起こる幾多の困難や葛藤も乗りこえて役割を果たしますが、祖父母の目立たない補助的な役割へも目を向けてみる必要があるのではないでしょうか。

思い出のマーニー』は小さな救済の物語ですが、不思議なできごとによって開かれたドアの先には、万人を救う優しさの世界が広がっています。
 親も子も祖父母もも恋人も夫婦も友人も、皆さんへお勧めです。
 もちろん、一人で観て嬉しい出会いを夢想するのも大賛成です。
 優しさバンザイ!




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 般若心経の音声はこちらからどうぞ。(祈願の太鼓が入っています)
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「おん ばざら たらま きりく」※今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0





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2011
11.30

祖母への言葉に込められたもの ─安心・恩返し・供養・あの世─

 まごころが言わせる「お別れの言葉」にはやいつも考えさせられます。
 A家のご葬儀では、お孫さん三人が、亡きお祖母ちゃんへありったけの思いを述べました。
 もちろん、三人は事前に打ち合わせをしていたわけでもないのでしょうが、気持に見事なほど共通点があり、一人の人間の生きざまと死にざまが持つ影響力の大きさに畏敬の念を深くしました。

 共通点は4つです。

1 いかなる時も守ってくれて嬉しかったこと。
 親子は、時には円く、時には四角い関係でそれぞれが磨かれます。
 しかし、もう円くしか座れなくなった祖父母は、いつも円く孫に接します。
 円い心とたたずまいは、孫にとって目に見えない温かで確かなシェルターになっています。
 心の揺れが激しい若人にとって、不変の安心をもたらす人がいることはどれだけ大きな救いとなることでしょうか。

2 静かで暖かなたたずまいに心が和まされていたこと。
 老人には若人ほどの激しさや鋭さはあまりありませんが、その分、穏やかさや暖かさはたっぷりあります。
 老人は単にいのちの勢いが薄れているだけでなく、若い頃に発揮できなかった徳を発揮しながら生きているのです。
 若い人がそれを感じることは、心が大きく広く豊かになれることです。

3 これまでは受けた恩に報いられなかったけれども、これから恩返しをすること。
 受けた恵みを素直に恩と感じ、自分をふり返って謙虚になり、これから自分もそうした恵みのある世界を生きることによって恩返しをしたいという気持は、私たち日本人の心を支える清浄な土台です。
 恩返しをもって行う以上の供養はありません。
 人の死という尊い機会によって、この点がくり返し自然に確認されている限り、日本はきっと大丈夫でしょう。

4 安心してゆっくり休んで欲しいこと。
 心を澄ませば、この世とあの世が緩やかにつながっていることに気づくはずです。
 そして、先に逝った人々が見守っていてくださることも確信できます。
 自分もまた、あの世へ行けば生きている人々を見守っていたいと思います。
 ご先祖様方が生き死にをくり返したいのちの流れの中で、こうした安心の核がつくられ自然に伝えられてきました。
 感謝し、同じ核を大切にして生き、死んで行きたいものです。

 こうして並べてみると、いずれも平々凡々たる祖母と孫の心模様のようですが、ここには、この世とあの世と未来への安心が何によってもたらされているかが、見事なほど過不足なく示されています。
 三人には、この「お別れの言葉」を生涯、大切にして生きていただきたいものです。
 葬儀という場の大切さ、安心の基盤、守り伝えてゆくべきものの価値を再確認させられました。

(この文章は平成17年に書きました。もうネットで読んでいただけない古い綴りの中から行者高橋里佳さんがピックアップしたものを加筆修正の上、再掲しています)

〈観音様は母親だけではありません〉
201111302.jpg

〈絶対のシェルター〉
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「のうぼう あきゃしゃきゃらばや おん あり きゃ まり ぼり そわか」※今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
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