宮床開運守本尊 大師山 法楽寺 〜法灯により法友とともに法楽に住せん〜

2008-08

一対になった方

 最愛の伴侶を亡くしたAさんが、涙ながらに生前戒名を求められました。
 もちろん、意義については充分にご理解の上、「一緒にいられそうだから」と決断しました。

 ご主人の戒名には、事前の話はなかったにもかかわらず、ネクタイピンを作るほど好きだった生きものの名前が登場して驚かれましたが、今度は、お父さんが愛娘へそうあって欲しいと願っていたという花の名前が出ました。
 二つの戒名を並べると、まさに一対としか言いようがありません。

 お授けを受けたAさんは、世間の荒波に一緒になって立ち向かったご夫婦の話に加え、家族同様だった愛犬のエピソードも聞かせてくれました。
 ご主人が倒れて入院した日、一緒にベッドで寝ていた飼い犬B君が突然、体調を崩して食べものが喉を通らなくなり、病院で検査を受けても原因が見つからず、そのまま入院となりました。
 ところが不思議なことに、ご主人が亡くなった日から、まったく以前通りの元気をとりもどしたのです。
 自分も苦を背負おうとしたのか、それとも、守らねばと自分のいのちをかけたのか、よくは判りませんが、単純に、「寝る時に一緒のご主人様がいなくなったストレス」とは思えないそうです。
 そうであるならば、亡くなった途端に食べものへ喰らいつくはずはありません。
 B君なりに何かを知り、自然な反応が出たのでしょう。

 Aさんの述懐です。
「もう、これで、何の心配もありません。
 主人がいなくなった以上、欲しいものなどもありません。
 後を追うつもりでいたのにこのような生き直しができたのは、想像もしなかったことです。
 主人はあの世で、私はこの世で、しっかりやって行きます。
 仏様に、いつまでも一対ですよと教えていただいたのですから」
 Aさんは、ことに応じて、生前戒名にある法名を新たな名前として名乗り、刻んだ文字の朱色のように活き活きと過ごされることでしょう。

 耐用年数の過ぎた肉体という衣を脱ぎ捨ててみ仏の世界へ旅立ったご主人、そして、み仏の子としてこの世で生き直しをされた奥さんの新たな旅立ちへみ仏のご加護がありますよう。

さようなら、Nさん

 昨日の早朝は、真っ白に光る満月が西の空にかかり、きらめく星々を伴に従えているような趣がありました。
 修行へ入る前にしばし、合掌をしたほど心惹かれる清浄さでした。
 そんな日、緊急の電話が相次いで二本、入りました。
 Nさんが亡くなったのです。
 
 関西から移住されたNさんは墓地と寺院を探しておられ、たまたま『法楽の苑』を見に来られたおりに作業中の私とお会いになり、「気に入ったけん」と即断されました。
 すぐに墓地を求めてお墓を造り、奥さん共々生前戒名を求め、「これで安心じゃ」と持病との闘いに専念しておられました。
 それから三年半、お盆やお彼岸には必ず顔を会わせており、会うたびに親友あるいは兄弟といった感じの信頼関係を確認できたNさんは、足早に旅立たれました。

 いつも郷里の関西方面に気をくばり、幼稚園の洗濯機が壊れたと聞くと一度に三台も送ってしまう優しい方でした。
 病状が好転したら住職とゆっくり話がしたいと口癖のように言っていたそうですが、この世では、墓地の契約と生前戒名のおりがたった二度の機会でした。
 しかし、あの世でまたきっとお会いできると思っています。

 枕経に駆けつける夜空には満月。今度は東の空に王のような姿を見せています。
 ご遺族は、あまりに早かったと言われます。
 早すぎない死はあり得ませんが、生前戒名に「麗しい月のような方が天翔ける」と表れたNさんは、この日を選ばれたのではないかと考えています。
 長い間の闘病に疲れ、ご遺族が最期は大変じゃないかと心配しておられたにもかかわらず、とても穏やかに逝かれたNさんが遺したのは、「もうアウト」という静かな一言だったそうです。
 とても潔く、いのちの限りを尽くしながら淡々としておられたNさんらしいなあと、胸が熱くなりました。

「精魂込めて引導をお渡しします。Nさん。寺子屋を造り、貴方が植樹してくださった桜を立派に育ててから、やがて私も行きます。今度こそゆっくりお話しましょう。しばし、お待ちください」

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戒名のつけなおし 1

 ご相談がありました。
「法楽寺さんで葬儀をしていただきましたが、郷里にあるお寺のお墓にお骨を納める時は、住職にわけを話せば大丈夫でしょうか?ウチで新たに戒名をつけなさいと言われたりするのではないかと心配なのですが」

 お答えしました。
「戒名は、戒律を授かり仏弟子として生き直す際にみ仏から降りる厳粛な名前です。
 ちょうど、親が我が子の幸せを願って一生懸命考えて名前をつけるようなものです。
 今は亡くなってからみ仏の元へ旅立つ時に授かる場合が圧倒的に多いのですが、当山では、生前戒名を申し込んで人生の再出発をしようとする方が徐々に増えています。
 人は親からいのちと共にもらった名前を用いて一生を生き抜きます。
 戒名もまた、清らかな一本道を歩むためにみ仏が定めた魂の名前ですから、寺の都合でつけ直すなどということがあってはなりません。
 現に、『法楽の苑』に眠っておられる方々の宗派はさまざまで、当山では、心からこの聖地を選んだ方々をわけへだてすることなく、それぞれの戒名をもってご供養しています。
 万が一、ウチで戒名をつけなければお墓へ入れられませんと言われたならば、その仏法上の理由と、墓地の永代使用契約を結んでいる当事者として拒否する根拠をお尋ねになるべきです」

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