宮床開運守本尊 大師山 法楽寺 〜法灯により法友とともに法楽に住せん〜

2008-07

行者の心得 その4

10 結界を張ること。

 結界において一番気をつけねばならないのは、自分が仏神であると思いこんで死んだ人がそのまま妄者となって現れて来る場合があるので、それを決して入れないことです。
日本霊異記』などを読めば、意志を通したいと我を張ったまま妄者となった怨霊のすさまじさが解ります。
 正統な修法結界を結ばないと、念の力が妄者を呼び寄せてしまうことも珍しくありません。
 テレビで怪しい占い師や霊能者が、何かにとりかかるとすぐに気持が悪くなったり、不安げな表情になったりするのは、自分でそうした流れを作るからであり、護身法の力を甲冑としてまとう正統な行者は何ものを相手にしても淡々としており、何ものにも怯えません。
 気持が悪くなったり怯えたりしたら勝負は負けに決まっています。
 だから、第三者の目から見れば、特殊な場合を除けば、何ら〈それらしい〉ところがないままに、修法は終わります。
 護身法は、自分自身へ結界を張るものであり、隠形流行者は迷わず、惑わされず、ただただ素直に伝授を信じ、励みましょう。
 まず、きちんと自分の身を護られればこそ、いかなる亡者をも安心の世界へ導くことができます。
 泳げない人は、溺れている人を救うことはできないのです。

11 念力ではなく法力でことを行うのが仏法を信ずる行者の務めである。

 念ずることにおいて制限はなく、その内容は、善であったり悪であったりします。
 なぜなら、誰でも勝手にできるからです。
 しかし、法を結ぶことは、決して勝手にできはしません。
 なぜなら、法力を動かせる行者からしか法力は受け継がれないからです。
 だから、お大師様は、法の伝授は「器から器へ移すようなものである」と説かれ、弟子が密教を伝授されるべき器であるかどうかを見極めるのが、師となる者の大事な仕事です。
 そして、受け継がれたものは、正しい修行方法によって正しく行者の血肉にならなければ決して生きません。「知った」だけになってしまい、宝は持ち腐れとなります。
 
 法力によって事態が動いたからといって驚く必要はありません。
 法力は加持力となっていのち全体へはたらきかけており、たとえ目立たないとしても心が変化していることは、何よりも大きなできごとなのです。
 修法の場を体験された方が、「霧が晴れました」「心が軽くなりました」「前へ進めそうな気持になりました」などと述懐されるとおりです。

 なお、仏法において「念ずる」とは、心へしまい込むべきものをきちんとしまい、努々(ユメユメ)疎かにせず、決して離さないことを意味します。
 釈尊は、それを「正念(ショウネン)」と説かれました。

8月の俳句

 8月は葉月です。
 俳人で信徒総代でもある鈴木悦子さん(仙台市太白区在住)の句です。
 鈴木さんは、機関誌『法楽』と新聞『法楽かわら版』へ何年にもわたって投稿しておられます。(掲載が月遅れになる場合があります)

夏の月今日も同じく鍵を閉ず


 夜更けに外へ出てみると、ひんやりした夜気が心地よく、空には月がかかり、清涼な光を放っている。
 家の中にはまだ暑い空気がよどんでいる。
 いっそのこと戸を閉めず開け放っておきたいが、そうもゆかない。
「閉ず」には「……。」としたくなる心残りがある。

して浮世を厭ふにあらず


 暑さを凌ごうとをかけている。
 一見、バリケード風だが決してそうではない。
 形は拒否のようでも心には受容の準備がある。

高鳴いて山野の眠り解く郭公


 郭公の鳴き声はとてもよく通る。
「高鳴いて」には、音程の高さや声の大きさだけでなく強さがある。
 モズもシカも虫たちも高鳴く。

夏の胸のうつろを埋め尽す


 夏のには春の靄のような膨らみや優しさがない。
 モノに遮られない限り一分の隙なく遍満している空気と一緒に、目に見える世界へすっかり浸透している。
 在りながら虚無のようなそれは、胸中の虚ろな思いと同じだ。
 気づくと、内も外も、もう、無彩色だ。

梅雨蝶の小さく翔び交ふ細流れ


 小さな流れを挟んだ草むらのあたりを蝶々たちが飛んでいる。
 自分と一緒に、梅雨の晴れ間を楽しんでいるかのようだ。

光りては雷神孤独な恍惚境


 稲光に次いで雷鳴が轟く。
 あらゆるものを畏れさせる雷神は世界の王だ。
 しかし身を縮め息を潜めている者たちとの間には絶対的な断絶があり、いかに王の力を示し、それを確認して自ら大きく頷こうとも孤独である。
恍惚境」とは恐れ入ったとしか言いようがない。

あの世より引き戻されし昼寝覚


 夏の昼寝には独特の深さがある。
 愛猫のクロが長く伸びている姿を眺めると、よく解る。
 すっかり我を失い切っている時、あの世に行っているのと何の違いがあろうか。
 目覚めの「ああ、戻ってきた」という感覚が「引き戻されし」となった。

右脳のみ覚めて風鈴聞いてをり

 風鈴の音がチリリーンと響き渡り、全神経が耳に集まって次の音を待っている。
 又、鳴る。
 今、言葉は要らない。左脳はお休みだ。
 

朝曇り今日も暑いと土鳩鳴く


 土鳩の声はどこかヤボ臭い。
 そもそも、伝書鳩などとして飼われていた彼らは、人間界で生きる。
 曇り空の下、眠りを破る野太い声は、すでに暑さを先取りしている。
 

夏の白くて詩心見失ふ


 見事なほど真っ白な
 あらゆるものの形も色もぼんやりし、感性ははたらかない。
 迷子になったようだ。

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