12月の俳句

 12月は師走です。
 俳人で信徒総代でもある鈴木悦子さん(仙台市太白区在住)の句です。
 鈴木さんは、機関誌『法楽』と新聞『法楽かわら版』へ何年にもわたって俳句を投稿しておられます。(掲載が月遅れになる場合があります)

あいまいに生きて又もや年つまる


 作者の言う「あいまい」は、決して「いい加減」ではない。
 女性として俳人として、み仏にすがる者として闊達に生きたということだろう。
 年を越すには、関所に至るまでの間に片づけるべきことを終えていなければならない。
 残りの時間がつまってくるのである。

日向ぼこにもらいし大欠伸


 は欠伸も、くしゃみもし、イビキもかく。
 夢を見るのかどうかは判らないが夜中に寝言も言う。
 クロが当山に住みつくまで、ネコがこれほどまでに人間に近い動物であるとは知らなかった。
 もっとも、DNAが人間と数パーセントしか違わないそうではある。

残照に種朝顔の蔓たぐる


 朝顔の種を取ろうと待っていて、その時期が来た。
 夕陽は沈んだが、西の空にはまだ紅みが残っている。
 冷たさを増した空気の中、蔓をたぐって種を集める。
 来年を待って黙々と作業をする作者の顔はいくらか紅く染まっていたのだろうか。

店の時計どれが本当か暮れ迅し


「今、何時なんだろう」と思って時計屋に飾ってある時計たちを見ると、それぞれに時を告げていて、はっきりしない。
 よく比べて確認するまでもなく、夕闇は急速に近づいてくる。
 秋の「つるべ落とし」である。
 時計のあいまいさと夕暮れの暗さの対比が面白い。

鈍くなる頭を扣く新生姜


 活きの良い生姜は気持をシャキッとさせる。
 ワサビがツーンと鼻にきて頭まで届く感じはよく理解できるが、生姜を頭にからませる発想は面白い。
 もしかすると、「しっかりしなきゃ」と、自分で自分の頭を叩くというイメージなのかも知れない。

鉢花を取り込むことも冬支度


 花が寒さにやられぬよう、鉢を室内へ入れなければならない。
 外で気持ちよさそうに直射日光を浴びていた花がガラス窓の内側へ入れられると、いかにも保護されているように見えてくる。
 守られなければ生きてゆけないものたちが愛おしくなる。

綿虫のただよふ軒の夕明り
綿虫の泛びつ消えつ目の暮

 綿虫は別名雪虫である。
 無風のやや暖かい日に空中を漂う。
 ロウでできた白いかたまりをくっつけてふわーり、ふわーりと遊びまわり、高い空へ消えて行く。
 素手に乗せると淡雪のように軽く、溶けてなくなりそうに儚い。
 夕暮れによく似合う。

松茸に思案の財布開けにけり
平和なる時間と思ふ松茸


 松茸は依然として高級品である。
 しかし、他に代え難い香りは、秋の味覚として欠かせない。
 好きな方は「これを食べないと秋になった気がしない」と言う。
 思い切って買えるのは今日をを安心して生きられるからであり、そこにある平和は確かである。

tag : 師走 俳句 朝顔 生姜 冬支度 綿虫 雪虫 松茸 夕暮れ

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Author:住職 遠藤龍地
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