--
--.--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2008
11.27

日本の歌 97 ─雪─


  作詞・作曲:不詳 明治44年、『尋常小学唱歌(二)』に掲載

1 雪やこんこ 霰やこんこ
  降つては降つては ずんずん積る
  山も野原も 綿帽子かぶり
  枯木残らず 花が咲く

2 雪やこんこ 霰やこんこ
  降つても降っても まだ降りやまぬ
  犬は喜び 庭駈けまはり
  猫は火燵で 丸くなる


 勢いのある歌である。
 降りしきるをものともしていない。
 小学唱歌ではあるが、作った人そのものが現れている。
 おそらく、若い方の作品だろう。
 遠くへ目をやるとをかぶった山や野原が広がり、幹も枝もまっ白に化粧した樹々が芸術作品のように林立している。
 そうした世界に包まれた民家の中では、猫がコタツでぬくぬくと暖をとり、犬は元気に庭を駆けまわっている。
 ここには、雪の山村のすべてがある。
 何ものをも凍らせる冬将軍は人間にとって脅威だが、そうした気配はみじんもない。
 確かに子供たちにうってつけの歌ではある。

 しかし、時代背景を調べると考えさせられる。
 歌が発表された年の1月18日、大審院で大逆事件を裁く判決が下り、幸徳秋水などの被告24人全員が死刑判決を受けている。
 翌日、そのうち12人が無期懲役に減刑されてはいるが、24日に早くも11人の死刑が執行され、最後の一人も翌25日に露と消えた。
 国は権力を強め、指導部の方針にたてつく者を許さない。
 第三次日英同盟が結ばれ、イタリア・トルコ戦争、辛亥革命が勃発している。
 動乱の気配が高まりつつ明治が終わりを告げる頃、半世紀近く前に西洋列強と対峙すべく立ち上がった日本は、高揚の一途をたどっている。
 平塚らいてうたちの文芸誌「青鞜」が創刊され、男も女も視線を前方やや上へ向け、未来を信じ、強い足取りで歩んでいる。

 わずか30数年後、この年に生まれた子供たちが社会人として力を発揮し始め、子供ももうけようとする時期に、敗戦という未曾有の国難に遭うとは誰も予測しなかったことだろう。
 230万人もの兵と80万人もの民間人が死ぬ地獄は、国威高揚の果てに待っていた。
 滝があると知らずにだんだん佳くなる景色に歓声を挙げ櫓を漕ぐ人々、大海が待っていると信じて導く船頭。
 そして、船がもまれ始めたら最後、岸へつけられず、引き返すこともできない滝壺へと続く激流──。
 人間の行い、国の行いを考えずにはいられない。

 雪に戯れる子供たちの無邪気ないのちの饗宴を可能にするものは、畢竟、平和でしかない。
 国が平和で、家庭が信頼と安心に満ちていれば、子供たちはいかなる季節でも、どこにいても、モノや金に恵まれなくても笑顔を輝かせられる。
 平和が破れ、家庭が崩壊すれば、たとえモノや金があっても子供たちは心からはしゃぎまわることができない。
 今の平和を守り、未来の平和を招来するためには、平和を第一とする大人たちの智慧と努力が欠かせない。
雪やこんこ 霰やこんこ」と唄う歌声がとぎれないよう願ってやまない。
スポンサーサイト

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。