冥土の安心

 Aさんのお母さんが亡くなられました。
 ご主人がとても優しい方で、楽しい三人の同居が続いていましたが、無常の風は避けられませんでした。
 才色兼備のAさんは述懐されます。
「母はいくつになってもただ居てくれるだけで大きな安心でした」
 何不自由ない、何でもできる還暦間近のAさんにしてこうした思いを抱かせる母親の存在というものを、あらためて考えさせられました。
「倒れてからの数日は、あちら側とこちら側を行き来している様子で、母の両親・亡父・亡兄などが入れ替わりで迎えに来て、楽しそうに話をしていました。
 きっと母の旅路を明るく照らし導いてくれていることでしょう」
 家族は、この世とあの世と幽明それぞれに別れても永遠に家族であるという感覚は、大いなる安心をもたらします。
 三途の川の向こうに広がる花畑越しに、先に逝った家族が呼んでいるといった臨死体験をされた方は、死の恐怖から解放されています。
 冥土は決して暗闇ではなく、み仏に守られた先亡の方々がおられる救いの世界です。
 Aさんのお母さんは、行きつ戻りつしながら、その境地を示してくれました。
 やはり、〈安心を与えてくれる存在〉だったのです。
 きっとこれからも、何かのおりに手を差しのべてくれることでしょう。

tag : 無常 臨死体験 冥土 安心 花畑

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Author:住職 遠藤龍地
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