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2011
12.16

教師は言う「謝りに行きますか?」(その2) ─破壊されるまごころ─

 大人も子供も、無難に〈その場をやり過ごす〉達人になりました。

 問題を提起された教師は、早く、穏便に、ことを済ませてしまいたいのです。
 そうしないと詰まっている予定をこなせず、教師としての成果を挙げられないからです。
 また、理不尽で気まま勝手な要求をするモンスターペアレントへの対策がこうした態度をつくってしまったのでしょう。

 説教された生徒は、早く、不快な時間を終わらせてしまいたいのです。
 そうしないと自分の時間が壊されてしまうからです。
 また、勉強など、親が喜ぶことをやっておかないとガミガミ言われるからです。

 こうして、両者とも、追い込まれないうちに体(タイ)をかわすようになりました。
 こうさせたのは、人を追い込む社会です。
 数字上の成果を挙げられない教師も、テストの点数を上げられない生徒も、容赦なく苦境に追い込まれます。
 もちろん、追い込む方は、追い込まれる方の心理などを我がことのように想像してはくれません。
 
 常識や良識を逸したモンスターペアレントの非常識さはもはや、犯罪的です。
 それは、現場の若い医師から意欲を奪い、裁判などで病院の業務や経営に打撃を与えるモンスターペイシェント(怪物患者)と同じです。
 成績が上がることと、良い子であることをあまりに強制する親は、気づかぬうちに子供の心を破壊しています。
 11月24日、韓国で尊属殺人と死体遺棄容疑で逮捕された男子生徒(18才)は、受験勉強を強いる母親を殺しました。
 こんな体験もあります。

 ある幼い姉妹がいました。
 幼稚な妹に対して大人びた姉はいつもクラスでトップ、習い事にも天才的な能力を発揮し、連れられて来山するとすばらしい挨拶をし、こちらの考えていることを察知しようという目にぬかりはありません。
 親にとっても祖父母にとっても自慢の子です。
 しかし、私には、その目に浮かんでいる狡知さがとても心配でした。
 祖父も祖母も亡くなり、二人は私の目の前でお別れの言葉を読み上げました。
 まず、妹がきれぎれの息継ぎで必死に涙をこらえながら短い文章を読みました。
 つぎに、姉が100点満点の文章を堂々と朗読しました。
 まるで作文の発表会でもあるかのように……。

 私たちは、あまりに無慈悲な〈追い込む社会〉をつくってしまったのではないでしょうか。
 それは、高度成長から始まり小泉改革で社会正義となった弱肉強食の「競争第一主義」、そして「グローバル化に乗り遅れるな」に関係があるのかも知れません。

 11月20日、国賓として来日していたブータンのワンチュク国王夫妻が被災地慰問などの公務を終え、帰国の途につかれました。
 夫妻の振るまいと発言は、私たちが失いかけている大切なものを思い起こさせました。

「ブータン国民は日本に特別な愛着を抱いています。
 このような不幸から強く立ち上がることができる国があるとすれば、日本と日本国民であると信じています」
 我々の物質的支援はつつましいものですが、友情、連帯、思いやりは心からの真実なのです」


 作家池澤夏樹氏は、12月10日付の朝日新聞に『幸福なギリシャ グローバルでない人々』を書きました。

「僕は1975年から3年近くギリシャで暮らした。
 その時のギリシャは幸福な国だった」
「農産物の味はよく、物価は安かった」
「友人としては最高。
 一緒に遊んであんなに楽しい人々はいない。
 彼らにとって友情は最高だからどんな無理も聞いてもらえる。
 もしも何かの罪に問われて追われる身となったら、僕は何としてもギリシャへ逃げる。
 友人に会って苦境を伝えれば世界を相手にしてでもかくまってくれる」
「国家とか政界経済とか金融とか、そういう大きな言葉がなじまない。
 およそグローバルでない人々。
 EC加盟の直後に聞いた愚痴は『おいしいトマトがみんな北に行ってしまう』だった」
「何年か前、クレタの山の中で、たまたま道を聞いた人家に招き入れられ、午後いっぱいその家の主の作ったワインを飲んで過ごしたことがある。
 EUのせいで首都アテネの人心は荒れたが田舎はまだ昔のままだと思った。
 昨日届いた便りでは、ギリシャの人々はもう外食もしなくなったという」


 追い込む人々は、他人の心を自分の心としておもんばかる力を失い、追い込まれる人々は自分を守るために、〈他人へまごころで対応する〉という道義・道徳の底を失っています。
 そして、追い込む人はいつ追い込まれる人になってもおかしくなく、追い込まれる人もまた、いつ追い込む人になってもおかしくはありません。
 互いに追いつめ合う無慈悲な世界こそ、修羅界であり畜生界であり餓鬼界であり、行きつく先は地獄界ではないでしょうか。
 この怖ろしい道行きに気づき、人と人とがまごころで接する社会に転換するよう祈る思いです。

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 原発事故の早期終息のため、復興へのご加護のため、般若心経の祈りを続けましょう。
 般若心経の音声はこちらからどうぞ。(祈願の太鼓が入っています)
 お聴きいただくには 音楽再生ソフトが必要です。お持ちでない方は無料でWindows Media Player がダウンロードできます。こちらからどうぞ。




「おん さんまや さとばん」※今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。



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