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2015
02.06

映画『紙の月』とイスラム国

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 映画『紙の月』(原作:角田光代著『紙の月』)は、何不自由ないのに〈満たされない〉女性銀行員が、ふとした成り行きで不倫のために横領し、破滅する物語である。
 人は善悪を知り、悪意もないままに、取り返しのつかない行動に走る場合がある。
 しかも、最初は〈大丈夫〉だったはずなのに……。

 宮沢りえが演じた主人公梅澤梨花には、子供の頃から解けない疑問があった。
 ミッション系の中学校に通っている頃、貧しい国の子供たちへ全校挙げて募金運動を行っていた。
 与えることをこそ喜ぶという精神で始まり、実際に救われた現地の子供たちから手紙が届いたりもして、善意は高まっていた。
 しかし、運動が下火になった時、梨花は父親の財布から盗んだお金を募金箱へ入れる。
 シスターは当然、叱るが梨花は退かない。
 シスターから教えられたはずの大切な精神を仲間たちが忘れてしまっているのに耐えられず、クラスとしての目標達成を目指してやった行動は赦されないのかという。
 お題目を唱えるものの、実態が薄れてしまっている信念や善意を暗に批判している。
 大きな〈善〉のために小さな〈悪〉は赦されるのではないか?
 場合によっては、悪を敢えて行うところにこそ、信念や善意に中身を伴わせる人間の真実があるのではないか?
 すぐに薄れる信念や善意など、結局は偽ものではないか?

 こうした疑問を抱きつつ大人になった梨花は、人も羨む私生活や仕事ぶりにもかかわらず、依然として〈偽もの〉に囲まれていた。
 そこに生じた年下男性との不倫は本ものと思え、銀行の金を使い込み、カード地獄に堕ちながらもひとときに賭けたが、男は去り、悪事も露見した。
 調査した上司隅より子(小林聡美)と二人きりになった対決の場で、梨花は、お金で得られるものなどたかが知れていると言われ、行くべきところへ行くと脱走を決意する。
 そこで、ふり返りながらより子へ投げつけた言葉は鮮烈だ。
「一緒に行く?」
 上司から煙たがられるほどのはたらき者でありながら退社を求められ、それでも部下の不正を暴き、権利を行使して銀行員のイスにしがみつこうとするより子へ、言外に「貴女も偽ものを捨ててごらんなさいよ!」と挑戦状を叩きつけたのだ。

 では、梨花はどこへ行ったか。
 かつて中学生の頃、募金を送り、お返しにお礼状と写真をくれたタイの少年を探し、露店で見つけた相手はそれと気づかぬままに、子供が落としたいくつかのリンゴを拾ってくれたお礼として言葉も通じない中でリンゴを一個、梨花へ渡す。
 それをかじった梨花は黙って雑踏の中へ消えて行く。
 真実を確認した人生の勝者として。

 さて、イスラム国への戦闘員流入は止まらない。
 外国人戦闘員は1万5千人、出身国は80カ国を超えている。
 北大准教授中島岳志氏は指摘する。
「生きている実感が乏しいために、死に直結するような極限状況を求めている」
イスラム国への流入はこれからも続くのではないか。
 若者が生の実感を得るには、小さな場所でいいので社会とつながっていくしかない」
 きっと、流入する戦闘員は梅澤梨花と同じく、彼等なりに心身で実感でき、行動によってつかめる人生の真実を求めているのだ。
 つかんだ先に破滅や死が待っているかどうかは重大な問題でない。
 そもそも〈先〉がないからこそ、今、求めているのだ。
 同感だが、別な危惧もある。
 宗教が遠ざけられ、自由思考、自由意志が保証された社会で、私たちは善と悪とをきちんと判別して行けるのか?
 格差が拡大し、政治的にも経済的にもごく一握りの人々が動かすようになった社会において、無慈悲で乾いた空気はどのようにすれば潤いを取り戻せるか?
 
 イスラム国が「許せない」という敵意と、「滅ぼす」という害意と、その実行手段である武力とによって地上から抹殺できるという考えには錯覚、もしくは隠された意図が伴っているのではないか。
 過激な行動をさせないためには、彼等の心の核となっている部分を一時、地上で共存させ、時間をかけて穏やかに変質させるしかないのではないか。
 いつの時代も完全主義的な教団や社会に溶け込まない狂信的教団はあった。
 真の問題は、それらが武器を手にし、害意を伴う行動へ走るところにある。
 イスラム国の出現が何かの始まりでないよう祈りたい。
 また、梅澤梨花に似た〈個人的反乱〉が多様化、普遍化して頻発しない潤いのある日本であるよう祈りたい。




 原発事故の早期終息のため、復興へのご加護のため、般若心経の祈りを続けましょう。
 般若心経の音声はこちらからどうぞ。(祈願の太鼓が入っています)
 お聴きいただくには 音楽再生ソフトが必要です。お持ちでない方は無料でWindows Media Player がダウンロードできます。こちらからどうぞ。



「のうぼう あきゃしゃきゃらばや おん ありきゃ まり ぼり そわか」※今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8





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