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2015
04.12

『孤独地獄』と家族の救い

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 芥川龍之介が『孤独地獄』を書いたのは大正5年2月、24才の時である。
 主人公は、母親がその大叔父から聴いた話として、ある禅僧の述懐を記した。
 嫖客(ヒョウカク…遊び人)となって遊びほうける破戒僧禅超は言う。

「仏説によると、地獄にもさまざまあるが、凡(オヨソ)先(マヅ)、根本地獄、近辺地獄、孤独地獄の三つに分つことが出来るらしい。
 それも南瞻部洲下過五百踰繕那乃有地獄(なんせんぶしゆうのしもごひやくゆぜんなをすぎてすなわちじごくあり)という句があるから、大抵は昔から地下にあるものとなっていたのであらう。
 唯(タダ)、その中で孤独地獄だけは、山間荒曠野樹下空中(サンセンコウヤジュゲクウチュウ)、どこへでも忽然(コツゼン)として現れる。
 云(イ)はば目前の境界が、すぐそのまま、地獄の苦艱(クゲン)を現前するのである。
 自分は二三年前から、この地獄へ堕ちた。
 一切のことが少しも永続した興味を与えない。
 だから何時(イツ)でも一つの境界から一つの境界を追って生きている。
 もちろんそれでも地獄は逃れられない。
 そうかといって境界を変えずにゐればなお、苦しい思いをする。
 そこでやはり転々としてその日その日の苦しみを忘れるやうな生活をしてゆく。
 しかし、それもしまひには苦しくなるとすれば、死んでしまうよりも外(ホカ)はない。
 昔は苦しみながらも、死ぬのが嫌だった。
 今では……」


 主人公は「一日の大部分を書斎で暮らしている」ので、禅超や大叔父とは「全然没交渉な世界に住んでいる人間」であり、「孤独地獄」という言葉によって彼らへ同情する気持が起こる。
 しかし別世界から彼らを眺めて憐れんでいるわけではない。
 短篇は「或(アル)意味で自分も亦(マタ)、孤独地獄に苦しめられてゐる一人だからである」と結ばれている。

 孤独地獄は本来、場所が特定できない地獄という〈空間的〉分類の意味合いが強かった。
 芥川の天才は、何をやっていようと、いつでも現れるという〈時間的〉面からとらえ、恐怖感を身近なものにした。

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 4月11日、映画「イラク チグリスに浮かぶ平和」の上映会を終えた。
 アメリカの無差別空爆で孫たちなどを失った老父は、秩序の失われた社会でその後、息子たちまでも失って行く。
「もし自殺が罪でなければ、そこで息子たちに会えるのであれば今すぐに死にたい。
 神よ、私の罪をお許しください」
 カメラを向けている綿井監督は言葉を絞り出す。
「生きてください」
 老父の言葉が静かに返ってくる。
「どうかいつまでも、私たちのことを忘れないでください」

 老父が共に暮らす家族は、戦火と混乱に負けない最後のより所である。
 家族と母を重んじるイスラム教が、戦争とテロで破壊される殺伐とした社会にぬくもりを与えている。
 西洋文明的個人主義が限りなく利己主義へ傾きつつある現代にあって、イスラム教が拡大の一途をたどっているのはなぜか?
 決して消えない悲しみを共有しながら信頼の言葉をかけ合う家族の様子は、その答の一つを教えているのではなかろうか?

 老父は明らかに孤独地獄と共に生きている。
 表情は地獄に耐えている人そのものだ。
 しかし、地獄は決して彼だけのものではなく、イラク国民のものだけでもなく、イラクを「解放するため」と称して侵略したアメリカ軍兵士だけのものでもなかろう。
 よくよくふり返ってみたい。

 互いが地獄と共に生きていればこそ、本当の思いやりが生まれるのかも知れない。

 自分の身体と言葉と心のはたらきが他人様へ地獄をもたらさぬよう、何とか自分の愚かさと戦い抜きたい。
 ――社会的悪業(アクゴウ)とも……。




 原発事故の早期終息のため、復興へのご加護のため、般若心経の祈りを続けましょう。
 般若心経の音声はこちらからどうぞ。(祈願の太鼓が入っています)
 お聴きいただくには 音楽再生ソフトが必要です。お持ちでない方は無料でWindows Media Player がダウンロードできます。こちらからどうぞ。



「おん さん ざん ざん さく そわか」※今日の守本尊勢至菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。

https://www.youtube.com/watch?v=qp8h46u4Ja8





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