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2015
05.17

今日は死ぬのにもってこいの日 ―ネイティヴ・アメリカンと仏教―

201505170001.jpg

 ネイティヴ・アメリカンであるタオス・プエブロ族の古老から聴いた言葉として記された有名な詩が『今日は死ぬのにもってこいの日』である。

「今日は死ぬのにもってこいの日だ。
 生きているものすべてが、私と呼吸を合わせている。
 すべての声が、わたしの中で合唱している。
 すべての美が、わたしの目の中で休もうとしてやって来た。  
 あらゆる悪い考えは、わたしから立ち去っていった。
 今日は死ぬのにもってこいの日だ。
 わたしの土地は、わたしを静かに取り巻いている。
 わたしの畑は、もう耕されることはない。
 わたしの家は、笑い声に満ちている。
 子どもたちは、うちに帰ってきた。
 そう、今日は死ぬのにもってこいの日だ。」


 彼は宇宙と一体化し、人間としてあるべき姿となり、人生に必要なものをすべて得ている。

 私たちは古代から、3つの面における霊性の到達点を感得していた。
 認識能力は「真」へ、実践能力は「善」へ、審美能力は「美」へ行き着く。
 そのために学問、宗教、芸術の道がある。
 しかし、アメリカの大地で自然と共に生きる人々は、ごく普通の生活の中でそれを実践していた。
 
 だから、なすべきことをなし終えてこの世を去るにあたり〈思い残すこと〉など、何一つない。

 およそ葬送祝祭は人間が社会を営みだしてからずっと行われてきたものと思われ、そこには文化の基盤のようなものが見えている。
 どう送るか、どう祝うか、思いが極まり、思いが爆発する場にあって人々の心性は隠しようもなく顕わになる。
 しかし、この古老は自ら祝祭の中で葬送を始めている。

 行き着いた姿を示しつつ去ろうとしている。
 こうして人生に対する根本的不安から脱した姿を見届ける人々に、伝えられるべき叡智はしっかり伝わることだろう。

 この詩を繰り返し読むと、私たちの手からこぼれ落ちつつあるものがよくわかる。
 私たちがいかに大切なものを失いつつ、儚く危ういものを掴もうとしているか、気づく。
 叡智と浅知恵の落差に愕然とする。
 方や、霊性の発露であり、方や、はからいとマニュアルである。

 私たちは、今日が〈死ぬのにもってこいの日〉であると思えるだろうか?

 この境地は仏教の目ざす場所に似ている。
 仏教は決して、「欲を捨て、枯れ木のようになり果てよ」などとは説かない。
 それは最も非仏教的な仙人的世界である。
 無論、「気ままに恋と革命へ走れ」などとも説かない。
 これもまた非仏教的な煩悩(ボンノウ)にまみれた世界である。
 年令にかかわらず、「智慧を磨き、慈悲を育て、常に〈自他のため〉を忘れず、まっとうにいのちを生かせ」と説くのが仏教である。
 もしも、お釈迦様が強く戒めた放埒(ホウラツ)な姿で生きれば、若かろうと年老いていようと、必ず大きく転び、他者を傷つけ他者の迷惑になるだけでなく、死が近づけば激しい後悔や懺悔の念に襲われ、安穏に死を迎えられはしない。
 老いればいのちの力が衰え、嫌が応でも枯れて行くしかなく、そんなありようが理想であるはずはない。
 老いてなお異性を求めることもまた、理想であるはずがない。
 何を行うにも智慧と慈悲による一挙手一投足、仏教の理想はここにある。

 もちろん、古老が仏教徒であるはずはないが、心はその近くにあったのではなかったかと思えてならない。
 また、家族といういのちと心の泉を涸らさず、守り守られながら生き抜こうとしていたこともまた、眩しいほど確かだった。 タオス・プエブロ族は今や、約2000人が世界遺産の周辺で暮らすのみとなっている。




 原発事故の早期終息のため、復興へのご加護のため、般若心経の祈りを続けましょう。
 般若心経の音声はこちらからどうぞ。(祈願の太鼓が入っています)
 お聴きいただくには 音楽再生ソフトが必要です。お持ちでない方は無料でWindows Media Player がダウンロードできます。こちらからどうぞ。




「おん さんまや さとばん」※今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0





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