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2015
06.03

過去の情報は宝もの ―「マッチ売りの少女」とは?―

20150506004.jpg
〈剣印〉

 お大師様は説かれました。

「人が生きるべき道は無数に説かれている。
 それらが文字に残されず、吟じられてもいなければ、どうして根本的な道を知ることができようか。
 とうていわからない、もちろん私にも」


 以下、原文の読み下し文です。

「道(ドウ)を言い、道(ドウ)を言うに百種の道(ドウ)あり。
 書(ショ)死(タ)え、諷(フウ)死(タ)えなましかば、本(モト)何(イカン)がなさん。
 知らじ、知らじ、吾も知らじ」


 仏法を学ぶ立場からすれば、お釈迦様が入滅された後およそ500年もの間、教えが語り継がれていたからこそ、仏典が編まれたのであり、それらが解読され、探求されたからこそ、現在の修行が成り立つので、言い伝えられ書き伝えられすることは文化にとって欠かせません。
 そもそも、人間とは、自分とは何者なのか?という問いを問う時、人間は何をやってきたのだろうか?と調べることはとても重大です。
 過去から遺された情報によって、先人たちはこういう時にはこうした、人間は往々にしてこうしたパターンで行動するものだ、と知ると、自分のふるまい方、生き方をどうすべきか、具体的なイメージがつかめやすくなります。
 
 さて、私たちはアンデルセンの童話「マッチ売りの少女」を知っていますが、そもそも、安価なマッチを売るだけで少女たち、あるいは少女にまではたらかせねばならないような貧しい人びとが生きてゆけたのかどうか、よくわかりません。
 この〈マッチ売り〉には暗喩(アンユ)があります。
 戦争後などの混乱した時代に、少女たちはマッチそのものを商品として売るだけでなく、男を暗がりに誘い込み、マッチの明かりでこっそり陰部を見せてお金をもらうという哀しい行為によって生き延びたという隠された歴史もあるのです。
 もちろん、日本が太平洋戦争に敗れた後の廃墟においても――。
 当山はブログ「日本が戦争をする時、小学生はどうするか?」において、寺山修司の「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや」について書きましたが、この一首もまた、そうした光景を詠んだのではないかという説があります。

 私たちは、すべてを言い遺したり書き遺したりはできません。
 そもそも、後の世代へ渡したいものもあり、渡したくないものもあり、忘れてもらいたいことごとすらあります。
 東日本大震災で被災した建物などを遺構にするかどうかという判断は、地域住民にとって最も苦しい選択です。
 マッチ売りの少女が生きた〈事実〉は、ほとんど語られていません。

 そして、遺された情報をどうするかは、受け手に委ねられています。
 お大師様はこうも説かれました。

仏法は私たちへ示されるか、それとも私たちから隠され知り得ないかという問題ではない。
 私たち自身のありようによって、縁がない場合もあり、縁になりもする。
 それはちょうど、宝ものが見つかったり見つからなかったりするのに似ている」


 以下、原文の読み下し文です。

「法は行蔵(ギョウゾウ)なし、人に随って去来(コライ)す。
 宝の得がたきに似たり。
 得(ウ)るときんば則ち開く」


 まぎれもなく〈そこに在る〉宝ものであっても、見つけられる人もいれば、見つけられない人もいます。
 それは何も高価なものばかりとは限りません。
 おいしい野草のようなものですら、その価値が見逃されたり、生かされたりします。

 過去が遺した情報は貴重です。
 そして、遺された情報に接する私たちのありようも大切です。
 私たちはいかなる過去にどう向き合うか?
 よく考えてみたいものです。




 原発事故の早期終息のため、復興へのご加護のため、般若心経の祈りを続けましょう。
 般若心経の音声はこちらからどうぞ。(祈願の太鼓が入っています)
 お聴きいただくには 音楽再生ソフトが必要です。お持ちでない方は無料でWindows Media Player がダウンロードできます。こちらからどうぞ。



「おん あみりたていせい から うん」※今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y





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