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2015
12.29

【現代の偉人伝】第218話 ─競走馬ゴールドシップ─

201512290002.jpg
〈日刊スポーツ様よりお借りして加工しました。白く見えるのが奮闘するゴールゴシップ〉

 今年最後の偉人伝は人間でなく、馬になった。
 どうしても書き遺しておきたかった。

 12月27日、サッカーファンが「INAC神戸」澤穂希選手の神がかり的ゴールに酔いしれた日、JRA(日本競馬会)では老雄が最後のレースに散っていた。
 師走の名物「有馬記念」を戦ったのはゴールドシップ(牡6才)。
 3着までが3才馬と4才馬である。
 もう充分にベテランの域に達し、若手有力馬の台頭が目覚ましい中でファンはファン投票第一位に選び、専門家はほとんど本命あるいは対抗に押せない状況だったにもかかわらず、馬券は何と1番人気だった。

 夜中に観たJRAの動画では、案の定、スタートダッシュがつかず、最後方からの競馬になった。
 今年の菊花賞馬キタサンブラックが先頭に立ち1000メートルを62秒4で通過するというゆったりした流れで、追い込み馬にとってはもうほとんど届かない展開となった。
 2500メートルのうち、最初の1000メートルを1分以上かかるのは、ゆったりとレースが流れていることを表しており、先行する馬がゴールへ向かって徐々にペースを上げて行けば、後から追いかける馬は道中で力を使わせられてしまうので、最後の直線に入ってからの瞬発力を発揮しにくいのだ。
 それにもかかわらず、ゴールドシップはファンの期待どおり、向こう正面で最後方から驚異的な動きを見せ、ファンの大歓声を受けつつあっという間に4番手まで上がって行った。

 ほとんど、どの馬もこうしたレース運びはできない。
 途中で余計な力を使った上で最後に勝ちきろうとすれば、心臓も末脚ももたない。
 だから、騎手はなるべく馬と〈ケンカしない〉レース運びを目ざす。
 馬があまりスピードを出したくないのにムチで叩いたりすると、馬にとってストレスになってしまうし、反対に、馬がもっと早く走りたがっているのに手綱を絞って抑えようとすれば、かえって馬がムキになり、これも気力と体力を消耗させる原因になる。
 こうして馬たちの位置取りは自然に決まる。
 先行し、他馬よりも前へ行っている利点を武器にしてゴールへの逃げ込みや流れ込みをはかろうとするタイプの馬は前方に位置する。
 他馬の動きを見ながら先行馬をとらえようとするタイプの馬は中断に位置する。
 そして、道中、何も気にせずゆったりと走り、最後の瞬発力に期待して一気の追い込みを決めようとするタイプの馬は後方に位置する。

 ところがゴールドシップは違う。
 スタートが苦手で、ダッシュもなかなかつかず、そうかといって直線だけで勝負する、軽く鋭いカミソリのような切れがあるわけでもない。
 勝つためには、適当なあたりでなるべく前の方まで進出しておき、あとは根性で抜け出すのだ。
 この〈進出〉が並大抵の行動ではない。
 他馬がまだ、ゆったりと〈流して〉いる間に突然、ギアアップする。
 しかもそれからが正念場、先行する馬をとらえ、なおかつ、後から必ずやって来るであろう追い込み馬の猛追をしのぎきらなければならない。
 スパートしている時間が長く、いわゆる〈長い脚〉を使う。
 こうした誰も真似のできない芸当をこの馬はやってのけてきた。
 もちろん、そもそもが明らかに〈無理〉のあるレース運びなので、いつも成功するわけではない。
 しかし、決まれば胸のすく勝利となる。

 今年の5月3日、京都競馬場で第151回 天皇賞(春)が行われた。
 2年前のダービー馬で、凱旋門賞(仏)でも4着と健闘した武豊騎手のキズナ(牡5才)が一番人気、キズナと同年のラストインパクト、あるいは2才下のアドマイヤデウスやサウンズオブアースの充実ぶりもめざましく、恐らく最後の挑戦となるであろうこの盾を獲得するのは容易でなかろうと予想されていた。
 しかし、ゴールドシップは、お定まりのレース運びを見事に決めた。
 横山典弘騎手は、珍しく「お願い」するのではなく「檄を」飛ばしながら向こう正面でポジションを押し上げて進出、豪快に抜け出して勝った。
 レース後、「今後、この馬に何を期待しますか?」と訊ねられた横山典弘騎手は「もう何もありません」と答えてから、「たまにでいいから真面目に走ってくれれば」と付け加えた。

 さて、今年の有馬記念に戻るが、引退が決まっているゴールドシップにはもう、春の力は残っていなかった。
 前にいたキタサンブラック(牡3才)が粘り、横にいたサウンズオブアース(牡4才)、そして勝ったゴールドアクター(牡4才)が駆け抜けて行った後、8着でゴールした。
 しかし、決して脚が止まっての惨敗ではなく、ゴールドシップまでの間に、前の馬から一馬身以上離された馬はいない激戦だった。
 かつて、皐月賞、菊花賞、有馬記念、天皇賞、宝塚記念と最高峰のG1レースで勝利し、引退レースも手綱を取った内田博幸騎手は、引退式の壇上で涙を流しながら言い切った。
「自分の中で悔いのない乗り方ができた」
 引退式でも尻っぱねするほど気性が荒く、気まぐれな馬をなだめ、育ててきた今浪厩務員も泣いた。
「無事にあがってきてくれてホッとした。
 引退式では寂しさがこみ上げてきて(涙を)押さえきれんかった。
 世界一の相棒やからね」
 4万人ものファンが見守る引退式では、ありがとうの大歓声が谺(コダマ)した。

 もう一度、レースを観た。
 向こう正面、内田博幸騎手は老雄へ「さあ、行こうか」と声をかけた。
 老雄は「おう!」とばかりに往年の〈まくり〉を始めた。
 最終決戦場の最前面へ向かって──。

 剣聖とうたわれ、70才を超えてから戦場で斬り死にしたとされる上泉伊勢守を想う。
 浮き世の義理で戦闘に加わり、味方を勝たせながら、たった一人斬り死にした幕末の剣客平手造酒を想う。
 12月29日の日刊スポーツは厩舎へ届いたゴールドシップ宛の手紙を報じた。
「15着惨敗で初めて掲示板を外した13年ジャパンCの直後。
『あんなに強い馬でも、これだけ負けることがあるんだと、逆に勇気づけられました』。
 心の病を抱えた女性からだった。
 負けても負けてもくじけない姿が共感を呼んだ。」
 ありがとう、ありがとう、ゴールドシップ。
 小生も……。




 原発事故の早期終息のため、復興へのご加護のため、般若心経の祈りを続けましょう。
 般若心経の音声はこちらからどうぞ。(祈願の太鼓が入っています)
 お聴きいただくには 音楽再生ソフトが必要です。お持ちでない方は無料でWindows Media Player がダウンロードできます。こちらからどうぞ。




「おん あらはしゃのう」
※今日の守本尊文殊菩薩様の真言です。どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=WCO8x2q3oeM





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