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2016
01.20

人間の尊厳を破壊し社会から公正さを奪うもの ─一流企業不正事件・バス転落事故・世界的危機─

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 文化人類学者の上田紀行東工大教授は、1月17日付の河北新報で「『立派な会社』の相次ぐ不正」について論じている。
 平成27年、三井住友といったビッグネームを冠した会社のマンション傾斜事件、東芝の不正会計事件、フォルクスワーゲンの不正ソフトウエア事件などが社会をにぎわした。
 いずれも「立派な会社」と目されてきた会社だが、やっていたことの実態はあまりにも酷い。

「リーマン・ショック前の米国バブルの時期に世界はマーケティング至上主義に転換してしまった。
『いいものを作れば売れる』から『売れるものがいいものだ』へ、『立派な会社は評価を得る』から『評価を得る会社が立派な会社だ』へという価値の大逆転だ。
 自分たちの製品がどのように世界に貢献し、人々を幸せにするのかとは考えず、ひたすら売りまくって一位になる。
 経済的には勝者かも知れないが、人間の尊厳の敗北である。


 いずれの事件も、「人間の尊厳」を失した一流経済人たちによって引き起こされた。
 売れば勝者、金をつかめば勝者という風潮は、ついに食品の安全をも脅かし始めた。
 産廃業者に処分を依頼したはずの冷凍ビーフカツなど、捨てるべき食品が不正転売されていた事件は、「人間の尊厳」を失した時、人は何でもやるという事実を私たちへ突きつけた。
 この問題は社会全体へ広がっている。

 こうなった原因はマーケティング至上主義だけにあるのではなく、無制限な弱肉強食思想の解放にこそ最も重い罪があるのではなかろうか。
 軽井沢町のバス転落事故では、信じられないような低額でバスが走らされていた。
 ドライバーに肉体的負担がかかるだけでなく、経験の浅い人が安易に現場へ出たり、管理体制に不備が生じたりするのは当然だろう。
 もちろん、国土交通省は料金に制限をかけていたが、生きるために仕事の奪い合いをせねばならない現場は悲惨な状況になっていた。

 関東地方のバス会社社長である。
「(旅行会社から)運賃を切り詰められれば人件費を削らざるを得ず、正社員の確保も難しくなる。」

 亡くなった早稲田大学4年生阿部真理絵さん(22才)の父親である。
「料金の安さだけでなく安全性で選ぶことなどを親として子どもに指導しておくべきだったと非常に後悔しています。」

 かつて、作家曽野綾子氏は、航空券の安売り合戦に関して書いた。

「安売りに殺到するという心理はいつの時代にもあっただろうが、『そんなはしたないことをするな』とか『安物買いの銭失いということもあるんだ』と教えてくれる親や世間の知恵があった。
 しかし今はそんなブレーキもない。
 格安運賃で旅行を売る航空会社が雨後のタケノコのように増えたという。
 宣伝のために、関西から北海道まで往復500円という運賃を打ち出したところまであるという。
 いやな空気である。
 安売り合戦が始まったら、必ず機械の点検その他の基本的な管理に手抜きが出る。
 輸送機器の場合、それは人間の生死に関わる事故につながる。
 そうでなくても、安売り合戦はお互いの首を絞める自殺行為だ。」

「ものごとは基本的な理屈を通さねばならない。
 いくら経済のシステムは自由だと言っても、安売りで競えば必ず事故につながる。
 そしてまともな運賃を払う他の乗客まで巻き添えにする悲劇が起こることが、この業界の特徴だ。


社会には避けられる事故と避けられない事故がある。
 病気の発症の原因に遺伝的要素のあるものは、当人の責任といえない場合もある。
 しかし喫煙は必ず生活習慣病に一役かっているというのが医学の世界の常識だとしたら、喫煙者の健康保険料は高くしたらいいとの説に、私は賛成だ。
 これは避けられる事故に対する責任である。
 理屈で説明できないような安物に飛びつく心理は、利己的で社会性がなく、恥ずかしいものだ、と誰かが公然と言うべきだ。
 人はすべて適切な範囲の対価を払う義務を果たして生きるのである。
」(産経新聞「透明な歳月の光 477」より)


 また歴史学者である米コロンビア大学教授マーク・マゾワー氏は指摘する。

ほんとうの危機は、国家間の対立よりも、テロリズムや気候変動といった世界共通のリスクに協調対応できない国際関係の隙間をついてやってきます。
 世界はいま、マネーが自分勝手に駈けめぐるグローバルな資本主義によって富の不平等が拡大しています。
 政治が取り組むべきは成長よりも、むしろ、富の再配分への介入だと思います。


政治家はいつの時代も、権力に都合よく歴史を読み替え利用しようとしたがるものです。
 時代背景が異なる何百年も前の事例を、あたかも現代に通用する物語として聞かせたがる場合もある。
 そのときに『間違っている』と声をあげ、ただす役割は非常に重要です。
 だから、歴史家は権力から独立していなければならない。
」(朝日新聞「歴史から学ぶ」より)


 現代世界で最大の問題は「グローバルな資本主義」にタガを嵌めることではないだろうか?
 私たちは〈自由競争〉と〈経済成長〉が自動的に世界を幸福にするという作られた神話から、そろそろ目覚めるべきではなかろうか?
 神話を声高に語ることによっていったい誰が利を得てきたか?
 神話の幻想を楯にして私たちの「人間の尊厳」がいかに蔑(ナイガシ)ろにされてきたか?

 社会は人間によって構成されている。
 上田紀行教授はそこから社会を変えようとしておられる。

教育とは長い間『立派な人』の育成を目指すものであった。
 短期的評価を目指すのではなく、コツコツと努力を積み重ねる人。
 人間の弱さを知り、他人への思いやりに満ちて、人が見ていてもいなくても善行をなす『陰徳』を積む人。
 しかしそうした『立派さ』が死滅しようとしている。


「志ある学生の育成を掲げ、科学技術倫理教育も今までの『これをやってはいけない』という禁止型から、いかに『より善く生きるか』『世界を科学技術で良きものにするか』を探求する方向へ転換を図る。
 尊厳ある人間としての創造性こそを高めたいのだ。
 自身のくいが自己の確かな地盤に達していなければ、結局は権威や圧力に押しつぶされ、私たちは悪をなしてしまう。

 社会が、そして人間が表層的な評価に縛りつけられる中、そうした風潮にあらがうような根源的な試みもまた増えていくことを展望したい。」


 まっとうな倫理の復権こそが、「マーケティング至上主義」と「グローバルな資本主義」に踊らされず、その非人間性を糺し、尊厳の回復と公正な社会の実現をはかる道ではなかろうか。
 何が私たちの心を荒ませ、何が私たちの未来を奪おうとしているのか、よくよく目を見開きたい。




 原発事故の早期終息のため、復興へのご加護のため、般若心経の祈りを続けましょう。
 般若心経の音声はこちらからどうぞ。(祈願の太鼓が入っています)
 お聴きいただくには 音楽再生ソフトが必要です。お持ちでない方は無料でWindows Media Player がダウンロードできます。こちらからどうぞ。



「のうぼう あきゃしゃきゃらばや おん ありきゃ まり ぼり そわか」※今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8





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