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2016
04.30

奇瑞の落とし穴(その1) ―『チベットの生と死の書』を読む(16)―

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 チベット密教のソギャル・リンポチェ師は生と死について説く。

 師は20台前半の頃、通訳としてドゥジョム・リンポチェの教えを受けていた。
 ある日、「かつてない驚くべき体験」をする。

「それまでの教えのなかで語られてきたことのすべてが一度に起こり始めたのだ。
 ──周囲のすべての物質的事象が溶けるように消えていった。
 わたしは興奮して吃った。
『リンポチェ……リンポチェ……起こりはじめました!』。
 そのときのドゥジョム・リンポチェの顔に浮かんだ慈愛の表情を、わたしはけっして忘れないだろう。
 彼はわたしのほうに身をかがめ、わたしをなだめた。
『それでいい……それでいい。
 あまり興奮しすぎないように。
 つまるところ、それは良いことでも悪いことでもないのだから……』。
 驚きと至福にわたしは我を忘れかけていたのだ。
 良い体験は瞑想の道の有益な道しるべになりうるが、そこに執着が入り込むと、それは落とし穴になる。」

「その体験をこえて、より深い、より確固たる基盤に向かってゆかなくてはならないのだ。」


 私たちは、一心に祈っているうちに、さまざまな超常現象に出くわす場合がある。
 それで自分の霊感を確信したり、悟ったような気分になったりするかも知れない。
 あるいは、何かに取り憑かれたようで不安な気持になったりするかも知れない。
 それらはいずれも〈経過的現象〉である場合が多く、過去の行者たちは、真の悟りへ向かう一里塚として冷静に扱った。
 もしも実体視したり、慢心したりすれば、横道へ行く。
 だから、根本経典『大日経』は、行者が奇瑞(キズイ…吉の兆し)や魔境(マキョウ…バランスの崩れによって起こる超常現象)などにとらわれず、そこを超えて行く「十縁生句(ジュウエンショウク)」を説く。
 ここでは、1番から5番までを記す。

1 

 身体と言葉と心をみ仏へ合わせて行くと、菩薩(ボサツ)や神など、物理的に説明できないを見ることがある。
 それは普段、身口意が三つの(ゴウ)を積んでいる状態から離れて、み仏の不思議なおはたらきである三密(サンミツ)に転換しつつあるのかも知れない。
 いずれにせよ、真言や瞑想の不思議な力を知り、変化は受けとめても、見えたものそれ自体に深くとらわれず、修行を続けねばならない。

2 陽炎

 厳かな仏界が陽炎のように見えるかも知れないが、それを実体視せず、その荘厳さ、清浄さを感得し、自分の愚かさや穢れや思い上がりから脱することが肝要である。
 また、世間に漂う想念は陽炎のようなものを相手にして起こっている場合が多く、それらにとらわれず修行を続けねばならない。

3 夢

 夢もまた、瞑想の影響による一現象であると知って、とらわれない。
 そして、私たちの苦楽そのものが夢のようなものであり、み仏の悟りに入ればそれは生じていないと観じて修行を続ける。

4 影

 何かに映る影は実体がなく、そうしたものについてあれこれ言っても無益であり、淡々と瞑想を続けねばならない。
 真言の力で生ずる不思議な効験も、それ自体は影のようなものであると知って、修行を続けねばならない。

5 乾闥婆城(ケンダツバジョウ)

 体験したことのない境地になると、まるでこの世を離れた天界の宮殿にでも入ったような気持になるかも知れないが、そこもまた仮そめのものであり、自在な心で瞑想を続けたい。
 蜃気楼として顕れる宮殿は、修行の結果、もたらされたものではあるが、それを実体視してはならない。




 原発事故の早期終息のため、復興へのご加護のため、般若心経の祈りを続けましょう。
 般若心経の音声はこちらからどうぞ。(祈願の太鼓が入っています)
 お聴きいただくには 音楽再生ソフトが必要です。お持ちでない方は無料でWindows Media Player がダウンロードできます。こちらからどうぞ。



「おん さん ざん ざん さく そわか」※今日の守本尊勢至菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。

https://www.youtube.com/watch?v=qp8h46u4Ja8





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