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2016
05.28

絶望と次の瞬間について ─『罪と罰』『夢十夜』─

2016-05-27-0008水子地蔵

 恋愛をしている時は、「もしも彼を失ったなら、私は生きていられない」などと思う。
 実際、恋愛の破綻で人生を狂わせてしまう場合がある。

 仕事に打ち込んでいる時は、「仕事ができなくなったら早めに死のう」などと思う。
 そして、仕事から離れた途端、腑抜けのようになってしまう場合がある。

 柔道一直線の時は、「俺から柔道をとったら何も残らない」などと思う。
 ケガや病気などで闘えなくなり、絶望人生への熱意も消してしまう場合がある。

 しかし決意も熱意も絶望も、いずれも〈その時点での人生観〉でしかない。
 自分の人生にこれから訪れるシーンをすべて脳裏に描き出せる人はいないし、未知のシーンで自分がどう考えるかをあらかじめわかっている人もいない。

 私たちの人生の基本は割合、単純だ。
 次々と現れるシーンにおいて、私たちは、それまでの考え方をつないで行くか、それとも新たな考え方が起こるか、それともそれまでの考え方に磨きをかけるか、それだけである。

 自分自身が銃殺刑を宣告され、執行の直前に特赦で助かったドストエフスキーは『罪と罰』でラスコーリニコフへこう言わせている。

「どこで読んだんだったけ?
 なんでも死刑を宣告された男が、死の一時間前に言ったとか、考えたとかいうんだった。
 もしどこか高い岸壁の上で、それも、やっと二本の足で立てるくらいの狭い場所で、絶壁と、太陽と、永遠の闇と、永遠の孤独と、永遠の嵐に囲まれて生なければならないとしても、そして、その一アルシン四方の場所に一生涯、千年も万年も、永久に立ちつづけなければならないとしても、それでも、いま死んでしまうよりは、そうやって生きたほうがいい、というんだった。
 なんとか生きていたい、生きて、生きていたい! どんな生き方でもいいから、生きていたい!
 ……なんという真実だろう!
 ああ、なんという真実の声だろう!」


 夏目漱石も短編集『夢十夜』の第七夜に、海へ飛び込んだ男の心を描いた。

「自分はますますつまらなくなった。
 とうとう死ぬ事に決心した。
 それである晩、あたりに人のいない時分、思い切って海の中へ飛び込んだ。
 ところが――自分の足が甲板を離れて、船と縁が切れたその刹那に、急に命が惜しくなった。
 心の底からよせばよかったと思った。
 けれども、もう遅い。
 自分は厭でも応でも海の中へ這入らなければならない。
 ただ大変高くできていた船と見えて、身体は船を離れたけれども、足は容易に水に着かない。
 しかし捕かまえるものがないから、しだいしだいに水に近づいて来る。
 いくら足を縮めても近づいて来る。水の色は黒かった。

 そのうち船は例の通り黒い煙を吐いて、通り過ぎてしまった。
 自分はどこへ行くんだか判らない船でも、
 やっぱり乗っている方がよかったと始めて悟りながら、しかもその悟りを利用する事ができずに、無限の後悔と恐怖とを抱いて黒い波の方へ静かに落ちて行った。」


 私たちは落胆し、絶望する時がある。
 そして、「人生はこのまま続く」あるいは「人生はもうおしまい」などと思う。
 しかし、実際は、死なない限り、〈一瞬後〉が必ずやってくる。
 それが何であるか、そして、その時に自分が何を感じ、何を考え、何を思い、何を語り、何をするかは決してわからない。

 行き詰まり、絶望したなら、こう思いたい。
〝──これは〈今の〉考えなんだ……〟
 こうして〈今〉と見る瞬間、絶望している自分を眺める客観的な自分が登場している。
 それはきっと、ラスコーリニコフのような気づきを与え、「夢十夜」の失敗をさせないはずだ。
 私たちは、自分の人生の〈次の瞬間〉を知らない。
 生きている者として生きてみるしかない。
 何という救いだろうか……。




 原発事故の早期終息のため、復興へのご加護のため、般若心経の祈りを続けましょう。
 般若心経の音声はこちらからどうぞ。(祈願の太鼓が入っています)
 お聴きいただくには 音楽再生ソフトが必要です。お持ちでない方は無料でWindows Media Player がダウンロードできます。こちらからどうぞ。



「おん あみりたていせい から うん」※今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y





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